2026/07/21 ブログ
インプラントの造骨手術とは?必要になるケースや主な手術方法について

インプラントは、顎の骨に人工歯根を固定することで天然歯に近い噛み心地や見た目を再現できる治療法です。しかし、インプラントを安全かつ安定した状態で支えるためには、十分な骨の量と厚みが欠かせません。
歯を失ってから長期間経過していたり、歯周病によって骨が吸収されていたりすると、インプラントを埋入するための骨が不足していることがあります。
そのような場合に検討されるのが「造骨手術」です。造骨手術によって骨の量を補うことで、これまでインプラントが難しいとされていた症例でも治療が可能になる場合があります。
ここでは、造骨手術の概要や必要性、メリット・デメリットについて解説します。
目次
造骨手術とは

造骨手術とは、インプラントを支えるために不足している顎の骨を増やす外科的処置の総称です。
インプラントは顎の骨としっかり結合することで安定性を得ます。そのため、骨の厚みや高さが十分でない状態では、安全に埋入できないことがあります。例えば、骨量が不足したまま治療を行うと、インプラントの一部が骨から露出したり、十分な固定が得られなかったりする可能性があります。
造骨手術では、自家骨や骨補填材などを用いて骨の再生を促し、インプラント治療に適した土台づくりを行います。
骨が不足した状態でインプラント治療を行うリスク
インプラントの安定性は、顎の骨の状態に大きく左右されます。
骨量が不足したまま無理にインプラントを埋入すると、十分な固定が得られず、治療後に動揺や痛みが生じる可能性があります。場合によってはインプラントが脱落してしまうこともあります。また、埋入スペースが限られることで手術そのものの難易度が高くなり、神経や血管などの重要な組織に影響を及ぼすリスクも高まります。
インプラントを長期的に安定させるためには、まず十分な骨量を確保することが重要です。
造骨手術のメリット
インプラント治療の適応範囲が広がる
骨量不足を理由にインプラント治療を断念せざるを得なかった場合でも、造骨手術を行うことで治療が可能になるケースがあります。
骨の高さや厚みを補うことで、インプラントを適切な位置へ埋入しやすくなり、治療の選択肢を広げることができます。
自然な見た目を目指しやすい

骨が痩せている部分では歯茎のボリュームも失われていることが少なくありません。
造骨手術によって土台が整うと、歯茎のラインや周囲の歯とのバランスが改善しやすくなります。特に見た目が重視される前歯部では、より自然な仕上がりに繋がることがあります。
インプラントの安定性向上が期待できる
十分な骨量を確保できると、インプラントをしっかり支えられるようになります。
その結果、噛む力を効率よく骨へ伝えられるようになり、長期的な安定性の向上が期待できます。また、埋入位置の自由度も高まり、機能面にも良い影響を与えます。
造骨手術のデメリット
治療期間が延びることがある

造骨手術では、移植した骨や骨補填材が新しい骨として定着するまで待機期間が必要です。そのため、インプラント埋入のみの治療と比べると、治療完了までに数ヶ月以上長くかかる場合があります。
ただし、十分な骨量を確保せずに治療を進めることは将来的なトラブルに繋がるため、必要な症例では慎重に治療計画を立てることが重要です。
全ての方に適応できるわけではない
造骨手術は有効な治療法ですが、患者様の全身状態によっては適応が難しい場合があります。例えば、喫煙習慣がある方や重度の糖尿病などをお持ちの方では、骨や組織の治癒が遅れることがあります。
そのため、事前の検査結果によっては造骨手術を伴うインプラント治療以外に、入れ歯やブリッジなど別の治療法をご提案することもあります。
造骨手術にはどのような方法がある?

造骨手術には複数の治療法があり、不足している骨の量や部位によって適した方法が異なります。実際には、CT検査などで顎の骨の状態を詳しく確認したうえで、歯科医師が治療方法を選択します。
ここでは、代表的な造骨手術の方法についてご紹介します。
サイナスリフト
サイナスリフトは、上顎の奥歯にインプラントを埋入する際に骨の高さが大きく不足している場合に行われる治療法です。
上顎の奥歯の上には上顎洞(サイナス)と呼ばれる空洞があり、骨が薄くなるとインプラントを十分に固定できなくなります。
サイナスリフトでは歯茎を切開して上顎洞の側面からアプローチし、上顎洞の粘膜を持ち上げたスペースへ骨補填材を填入します。その後、骨が再生されることでインプラントに必要な骨量を確保します。
骨の厚みが著しく不足している症例に適応されることが多く、比較的大規模な造骨手術に用いられる方法です。
ソケットリフト
ソケットリフトも上顎奥歯の骨不足に対して行われる治療法ですが、サイナスリフトより骨の不足量が少ない場合に選択されます。
インプラントを埋入する予定の位置から上顎洞の底部を押し上げ、そのスペースへ骨補填材を入れて骨の形成を促します。
多くの場合、インプラント埋入と同時に実施できるため、治療回数を抑えられる点が特徴です。
骨の厚みがある程度残っている症例に適応されることが一般的です。
GBR法(骨誘導再生法)
GBR法は、上顎・下顎を問わず幅広い部位に適用できる骨再生治療です。
骨が不足している部分へ自家骨や人工骨、骨補填材を補い、その上を特殊な人工膜(メンブレン)で覆います。この膜によって歯茎の侵入を防ぎながら骨の再生スペースを確保し、新しい骨の形成を促します。
比較的多くの症例で用いられる方法であり、骨幅や骨量が不足しているケースに対応できます。骨の再生には通常数ヶ月程度の期間が必要です。
遊離骨移植術(ボーンクラフト)
骨の欠損が大きい場合には、患者様自身の骨を移植する遊離骨移植術が検討されることがあります。主に顎の一部や別部位から採取した骨を不足している箇所へ移植し、骨量の回復を図ります。
重度の骨吸収が見られる症例にも対応できる一方で、骨を採取する処置が必要となるため、比較的高度な治療に分類されます。移植した骨が安定するまでには数ヶ月を要し、その後にインプラント治療へ進みます。
ソケットプリザベーション
ソケットプリザベーションは、抜歯と同時に行われる骨保存処置です。歯を抜いた後の穴に骨補填材などを填入し、骨が痩せてしまうのを防ぐことを目的としています。歯を失った部位は時間の経過とともに骨が吸収されやすくなりますが、この処置を行うことで骨量の減少を抑えやすくなります。
将来的にインプラント治療を検討している場合には、インプラント埋入に適した骨を維持するための有効な方法となります。骨が十分に成熟した後にインプラントを埋入することで、より安定した治療結果が期待できます。
造骨手術にかかる費用の目安

造骨手術は治療方法によって処置内容や難易度が異なるため、費用にも幅があります。
| 造骨手術の種類 | 費用の目安 |
| サイナスリフト | 10~35万円 |
| ソケットリフト | 3~10万円 |
| GBR法(骨誘導再生療法) | 3~15万円 |
| 遊離骨移植(ボーンクラフト) | 5~30万円 |
| ソケットプリザベーション | 1.5~10万円 |
骨量の不足が比較的軽度の場合に行われるソケットリフトは、処置範囲が限定されるため費用を抑えやすい傾向があります。
一方で、サイナスリフトや遊離骨移植術は骨の欠損が大きい症例に適応されることが多く、外科処置の規模や難易度が高くなるため、費用も高額になりやすいです。
造骨手術の費用が高くなるのはなぜ?
自費診療で行われるため

造骨手術はインプラント治療の一環として行われることが多く、原則として保険診療の対象外です。そのため、検査費用や手術費用、使用する材料費などは全て自己負担となります。また、自費診療であることから、治療費は歯科医院ごとに設定されており、費用に差が生じる場合があります。
また、造骨手術では、自家骨の他に人工骨や骨補填材などの特殊な材料を使用します。これらの材料は安全性や骨再生能力を考慮して開発されており、品質管理にもコストがかかっています。さらに、造骨手術は高度な外科処置であり、専門的な知識と豊富な経験が求められるため、歯科医師の技術料も費用に反映されます。
インプラント治療や造骨手術で保険が適用されるケース
インプラント治療や造骨手術は基本的に自費診療ですが、一部の特殊な症例では健康保険が適用されることがあります。
先天的な疾患がある場合
- 生まれつき顎の骨が3分の1以上連続して欠損している場合
- 先天性欠如歯が6本以上認められる場合
- 顎骨の形成不全と診断された場合
- 連続して4本以上の永久歯が先天的に欠損している場合
病気や外傷による骨欠損がある場合
- 腫瘍や顎骨骨髄炎などの疾患によって顎骨が広範囲に欠損した場合
- 交通事故や外傷によって顎骨の大部分を失った場合
- 骨移植などによって顎骨の再建治療が行われた場合
ただし、これらは限られた症例にのみ適用される制度であり、一般的なインプラント治療が保険適用になるケースは多くありません。
造骨手術を伴うインプラント治療の流れ
STEP1.必要に応じて骨を採取する
自家骨を使用する治療計画の場合は、まず患者様自身の骨を採取します。採取した骨は細かく加工し、骨が不足している部分へ移植するための準備を行います。
STEP2.インプラント埋入部位を準備する

歯茎を切開し、インプラントを埋め込むための処置を行います。骨量が不足している場合には、インプラント埋入前または同時に造骨手術を実施することがあります。
STEP3.骨補填材や移植骨を填入する
不足している骨の部分へ、自家骨や人工骨、骨補填材を補います。その後、骨の再生を促すためにメンブレンと呼ばれる特殊な膜で覆い、再生環境を整えます。
STEP4.骨の再生と定着を待つ
処置後は歯茎を縫合し、骨が成熟するまで一定期間経過を観察します。治癒期間には個人差がありますが、その間は患部へ過度な刺激を与えないよう注意が必要です。
STEP5.人工歯を装着する
骨とインプラントが十分に結合したことを確認した後、最終的な人工歯を取り付けます。
人工歯は周囲の歯との色調や形態を考慮して製作され、装着後は噛み合わせなどを細かく調整します。
治療終了後も、インプラントを長く維持するためにはセルフケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。継続的な管理によってインプラント周囲炎などのトラブルを予防し、良好な口腔環境を保つことができます。







